この映画は感動作でも笑える物語でもない。だがスーダン難民を描いたこの作品は、人間とは、生きていることとは何かを強く考えさせられる映画である。
内戦から命からがら難民キャンプへ逃れた兄妹たち。そして難民の受け入れ先であるアメリカへ行けることになり、喜ぶ兄妹たちであったが、アメリカでの生活は決して楽しいものではなかった。
彼らの受け入れ先の女性の心境の変化や、離れていた妹との再会等、ドラマチックな見どころもあるが、私がなにより心を動かされたのは、難民である彼らの真面目さであろう。
いつ死ぬかもわからない環境で育ち、両親も村人も兄弟も殺され、その心に負った傷は計り知れない。
それでも真面目に、単純労働しかさせてもらえない暮らしであっても、あくまで真面目に生きていく。
これは映画だが、現実にもきっと難民でなければ、違う仕事、選択肢で活躍できただろうなという人たちがたくさんいるのだ。
もちろん難民全員が、この映画の彼らのように皆真面目とは限らない。一概に私は、難民受け入れ肯定派ではないが、生まれた場所によるこの不公平感はいただけない。
この映画のテーマは難民であるが、これは広く社会的弱者に対しても当てはまる事象であると考えられる。しばらく心に非常にもやもやしたものが残る。
皆が笑って暮らしていける世界など夢物語であるが、どうしても考えずにはいられない。
真面目な人が報われる世界。他力本願も甚だしいが、こういう映画を観た人たちが少しでも弱者に対し優しくなれたら、少しは住み良い世界になるのではと気持ちを改めた日々であった。