ゆっくり動画リスペクト作品の1つに、ドランク狸さんの作成した『阿房列車シリーズ』があり、何の気無しに聞いていたがとても面白かったので紹介しようと思う。
元祖乗り鉄とも言われる内田百閒(ひゃっけん)の書いた旅行記というのだろうか、が原作なのだが、先生とその連れであるヒマラヤ山系とのやりとりが、ゆっくりボイスで再現され妙にハマるというかクセになる。
用事もないのに東京から大阪へ行くことを発案し、あろうことか借金をして旅費に充てようと試みている。
しかもお金を借りて行くと言うのに一等車でなければ嫌だときた。しかも帰りは帰るという用事があるので三等車でも構わないと、これまた謎理論が展開される。
まことに自由奔放、いや自分勝手な先生なのだが、その人柄かはたまた文章力がそうさせるのか不思議と憎めない存在である。
旅行記というのに、実際汽車に乗り込み大阪に出発するまでにかなりの原稿の枚数を要しており、それがまた面白い。なるほど、文筆家とはたわいもない出来事をこうも飽きさせず読ませてしまうのかと感心する。
言葉遣いは多少時代を感じるものの、話の展開、表現力において全く古臭さを感じない。ちなみに阿房列車の阿房の読みは“あぼう”ではなく、”あほう”である。
私はこちらの動画を先に見たのだが、今度は鹿児島まで行ってみるという長距離コースである。
こちらも特に予定があるわけではないのだが、途中による駅や街、車内の様子など非常に楽しい。
先生はお酒に強いらしく、気がつけば呑んでいる描写が目につくが、これもまた豪傑らしく、しかし先生自身はどっちかというと結構細かくメンドクサそうな人であり、そのギャップも面白い。
こちらでもヒマラヤ山系が同行するのだが、とくに目立つわけではない彼の存在が話を面白くしていることが、文章のうまさを引き出している。
旅の途中、出てくる人物がみな魅力的に描かれており、非常に爽快な気分で見終われる。
私は寝る前などに音声だけで聞いたりしているのだが、原作も是非読みたくなった。おすすめの動画である。